小仕事をして,12時ちょうどには外に出る。

 JR「加島」から「西宮」へ,大学へ。

 今日は家庭会大学部会の総会である。

 ひらたくいうと,保護者のみなさんの会である。

 企画を準備した職員さんからの依頼で,「学生時代に未来をさぐる」というテーマでしゃべらせていただく。

 いくつかの議事をこなした後の時間であった。

 保護者のみなさんには,入学式や卒業式をふくめても,4年のあいだに大学へ来られる機会はほとんどない。

 となれば,数少ない大学関係者との接触の際に,最大の関心が「この大学の教育の実態はどのようであり」「この大学の教員はどういう構えの人間なのか」となっていくのは当然である。

 そして,その背後に,「この大学にまかせて娘は大丈夫か」という不安な気持ちが横たわるのも至極自然なこととなる。

 そうであれば,こちらが発信すべきメッセージの核心は,何より「学生に対する私たちの責任と愛情」そのものだろう。

 もちろん,それは「愛しています」の言葉だけでは伝わらない。

 学生の育ちに教職員がどのように真剣にかかわり,それが具体的にどう実っているかを,教員と学生・卒業生とのふれあいも豊かに示していくこと。

 そこらあたりが課題となる。

 ひるがえってみれば,こちらも大学生の子をもつ親である。

 その立場から,子どもが通う大学について知りたいことといえば,こまかい数字や制度ではない。

 何より「この大学の教職員はあてになるのか」ということである。

 「本気で学生を育てる姿勢をもっているのか」ということである。

 大学時代の4年間は,社会によって育てられる「子ども」の高校生から,社会の担い手である「大人」の社会人へと,1人1人が飛躍をとげていく時期である。

 その飛躍に我々がどうかかわっているかを,学生たちの姿もまじえて語る努力をしてみる。

 あわせて「子育ての最終版を,御家庭と大学で力をあわせて成功させましょう」というスタンスも。

 わずか40分のしゃべりだが,なかなかに真剣勝負の時間となった。

 「この大学に娘を入学させて良かった」。

 そういう実感をもって,みなさんに岡田山を降りていただくことはできたであろうか。

 それはこちらの教育実践の質が問われるということでもある。

 雨が強くなるなか,事務室の「隠し傘」(知らなかった,そんなものがあるとは)を借りて,一足先に山を降りる。

 ご来場の保護者のみなさん,おつかれさまでした。