椎名誠『アメンボ号の冒険』(講談社文庫,2006年)を読み終える。

 大きなイカダをつくって,川を下って,海に出る。

 休みの工事現場にもぐりこみ,トロッコを押して,海の近くのテントで泊まる。

 山の木の上に秘密の基地をつくって,シーツに幻灯機で自分の顔を映し出す。

 シ~ナの子どもの頃の遊びである。

 いま読んでも,面白そうだなあとワクワクする。

 ちゃんと計画があり,ちゃんと共同があって,共謀もある。

 「こんなことしたら叱られるかな」「見つからないようにしなくちゃな」。

 そういう大人との緊張感もいい。

 でも,たいがいの大人は笑って見守ってくれている。

 そういう「ゆとり」のある時代。

 せめて,心にだけでも,そういう「ゆとり」をもちたいものだ。