岡本太郎『壁を破る言葉』(イースト・プレス,2006年)を読み終える。

 これがなかなか味わい深い。

 「壁は自分自身だ」。

 「芸術の形式には,こうならなければならないという固定した約束はない。

 それなのに,勝手に縛られて,ジタバタしているんだよ」。

 これはきっと,人の生き方すべてに,同じことがいえるだろう。

 「自分をじっさいそうである以上に見たがったり,

 また見せようとしたり,あるいは逆に,

 実力以下に感じて卑屈になってみたり,

 また自己防衛本能から 安全なカラの中にはいって身をまもるために,

 わざとと自分を低くみせようとすること,

 そこから堕落していくんだよ」。

 「堕落」ときっぱりいいきるところがすばらしい。

 この人は,実に自分にきびしい人だったのだ。

 「制約が多いとみんな悩んでいる。

 だが,制約があるからこそ,

 自分のしたいことを貫くのが本当の行動になると思う」。

 「限界は,考えない。

 人間は,はじめから限界のふちに 立たされているんだから」。

 見事だね。

 これだけの思想を自分の人生の中からひき出したのなら。

 生き方を,よくよく考えて生きた人だったのだ。

 軽薄な物知りが机の上で語るのではない,生身の人生の迫力に満ちている。