川喜田敦子『ドイツの歴史教育』(白水社,2005年)を読み終える。

 「なぜ負の過去について教えるのか」「普通のドイツ人の責任を問う」

 「ゆがんだ歴史認識をどう解体するか」「『忘れられた犠牲者』への視点」

 「被害者としてのドイツ人」「変容する世界の中で」の全6章。

 戦後ドイツにおける「歴史教育の歴史」が様々な視角から論じられる。

 たとえば教科書『時代と人間』の「ナチスとドイツ史」の項は次のような文章で終わっている。

 「ナチ独裁は過去のものであるが,われわれの歴史の一部であることに変わりはない」

 「われわれはこの歴史と取り組み続け,『それがなぜ可能となったのか』についてより正確な答えを導き出せるようになる以外にはない」

 「ほかの時代にほかの国でも過ちが犯されたから,犯されることがありうるからといって責任を逃れることはできない」。

 日本でいえば高校生向けにつくられた教科書だが,ナチ独裁を可能としたドイツ人市民の責任を考えさせ,それを今日に活かそうとするものになっている。

 多くの力が歴史教育の改善を続けさせてきた。

 著者はそれを,端的に,よりよい社会をつくりあげようとする意志の力とまとめている。