文春新書編集部編『論争 格差社会』(文春新書,2006年)を読み終える。

 残念ながら,参考になる論文がほとんどない。

 理由は簡単で,「貧困」の実態によりそう姿勢をもつ論文がほとんどないから。

 机の上のこねくりまわしでは,格差の問題性も見えてこない。

 その中で,唯一これはすごいと思ったのは,次の竹中平蔵氏の一文である。

 「実際,今の日中関係はこれまでの歴史のなかでもっともよい状態ではありませんか」(170ページ)。

 いったいこの人は,日中関係のどこを,どういう基準でながめているのか。

 不思議なことをいう人である。

 あとはあいかわらず内容を明示しない「構造改革」の無条件での礼賛である。