山谷哲夫編『沖縄のハルモニ』(晩聲社,1979年)を読み終える。

 文中のハルモニは匿名となっている。

 しかし,それがペ・ポンギハルモニであることはまちがいない。

 その遺品の一部が「ナヌムの家」に飾られている。

 小さな靴下,正露丸……。

 日本にだまされて連れてこられ,戦後は米軍統治下の沖縄に暮らす。

 沖縄の日本返還時には,国外退去を強制されかけた。

 外国人登録がなされていなかったからである。

 その時に,なぜ自分がいま祖国をはなれてここに暮らさずにおれないのか。

 それを初めて語ったという。

 韓国でのキム・ハクスンハルニモによる「最初の証言」よりはるかに早い。

 こういう本が,自分の学生時代にすでに出ていたわけだ。

 そう思うと,この人の人生を見捨ててしまったような,なんとも複雑な気分になる。