児玉健次編著『聞こえますか 命の叫び──

 戦没学生 永田和生の「軍隊日記」』(かもがわ書店,2006年)を読み終える。

 京大時代に反戦活動に加わり,治安維持法違反で逮捕され,

 ビルマからインドに入る無謀なインパール作戦で命を落とした永田和生の物語。

 著者は『きけ わだつみのこえ』に収められた永田の文章に心をひかれ,

 そこからその足跡を追ってみたという。

 本書の中心は,永田自身による「軍隊にて書いた日誌」である。

 時期は,1943年1月から11月。

 淡々と記された短い文章に,自己をコントロールする永田の強い理性と,

 家族に対するやさしい愛情が読み取れる。

 息子和生を失った母せいは,戦後「遺族通信」にこう書いた。

 「『わだつみ会』の『不戦のちかい』こそ実に実に望ましく,

 お願いするものであります」。

 深い痛みと力のあわさる文章である。

 このエントリーのタイトル「わたしは生きて今……」は,

 永田本人に一度も会うことのなかった姪・三抄が,

 39年前に亡くなった永田を思って書いた

 詩「きけわだつみのこえ」の一節である。