西口克己『小説・蜷川虎三』(新日本出版社、1988年)を読み終える。

 「憲法県政」樹立に向けた作業の一環である。

 1968年「憲法をくらしの中に生かそう」の大垂れ幕が、京都府庁にかけられる。

 そして、この精神を住民の中に広げる努力が、行政によって行われる。

 「行政はかりに善意にみちていても

 上からの一方的な働きかけではダメだ。

 住民の自治能力と結びつかなければ

 --この知事の思いは、〈ろばた懇談会〉にみごとに開花したといえる」。

 通称「ろば懇」のコンサルタントとして活躍した、寿岳章子氏の言葉である。

 その後、1970年に6選をはたした蜷川氏は、

 新聞社のインタビューにこう答えている。

 「京都の人は自治意識が高い。だから、権力や金力で

 抑えつけようとすることには抵抗を感じたのではないか」。

 府民への全幅の信頼をあらわす言葉だが、

 あわせて、その府民の力を育てることが、

 氏には自らの課題と理解されていた。

 今後2年の取り組みにとって、この上なく、貴重な教訓といえる。