川崎二郎『このまま「アメリカ型」社会を目指して 本当に幸せになれるのか』(ダイヤモンド社、2007年)を読み終える。

 副題は「年金を破壊する『競争政策』の罠」。 

 小泉内閣で厚生労働大臣をつとめた川崎氏が、「アメリカ型」社会を目標とした「競争政策」政治を批判する。

 見習うべきは「アメリカ型」ではなく、「ヨーロッパ型」だとさえ述べる。

 紹介されている資料は、簡潔で、良くまとまっている。

 非正規雇用を減らし、それによって国内の消費力を高めよという主張も、至極もっともなものである。

 だが、財政問題を論ずる段になると、著者は話を消費税増税の不可避性に集中させる。

 歳出削減については、軍事費は聖域扱いであり、歳入の見直しについて、法人税増税の話はどこにもでない。

 さらに、消費税は国内消費のみにかかるのだから、輸出企業に害はおよばない。

 そんなご丁寧な解説までもがつけられている。

 結局、悪政のツケは、国民に転嫁されるのみである。

 それが、自民党政治の枠にとどまることの限界といっていいのだろう。