麻生太郎『とてつもない日本』(新潮新書、2007年)を読み終える。

 一つの大きなテーマが外交だが(長く外務大臣だったのだから)、

 アメリカの世界戦略に対する分析がまったくない。

 それでいて日米同盟は大前提とされる。

 ニートを「スネかじり」と翻訳し、

 「ニートはニートのペースで生きていくことを認めてもいいのではないか」

 と言い放つ。

 雇用の構造や若者の精神的閉塞には、まるで目がとどいていない。

 かつての「過ち」や「ナショナリズムの過剰な昂揚」については語るが、

 他方で、小林よしのり『戦争論』は「名著」と持ち上げられ、

 さらに靖国問題は外交問題ではないと断定される。

 年寄りは金持ちだとされ、格差を気にするなといい

 地方には自立の条件をあたえないままに「親離れ」しろと切り捨てる。

 自民党再生への新機軸は、どこにも見当たらないようである。