茂木健一郎&NHK「プロフェッショナル」製作班=編『プロフェッショナル 仕事の流儀13』(NHK出版、2007年)を読み終える。

 3人のプロフェッショナルの仕事ぶりが収められている。

 たまたまテレビで見たコンピュータ研究者の石井裕氏に興味をもって読んだのだが、漫画家の浦沢直樹氏、弁護士の村松謙一氏もとても良かった。

 特に、企業再生を専門に行う村松弁護士が、企業再生とは人の命を救うことだと語るところには感動させられる。

 「例えば、ある会社の社長が『経営が苦しくなった』と相談に来ました。夜逃げ同然に引っ越しを繰り返して、ウィークリーマンションを一週間ごとに渡り歩く生活。

 しかも、幼稚園ぐらいの女の子がいる。

 かつては立派な部屋があっただろうし、ピアノもあったかもしれません。その子が唯一抱えていたのが、テディペアです。

 そして夜中の二時や三時に、『お父さん、今度はどこに行くの?』なんていう。

 それはあってはならないことだと、私は思うんです。

 その年齢の子どもは、夜になったら温かい布団の中ですやすやと眠ってなければいけないでしょう?

 にもかかわらず、大人の世界の事情に、小さな子を巻き込んでしまっているわけです。

 それが、経営者自身や彼の家庭をどれだけ苦しめていることか」。

 村松氏は「弱肉強食の論理」をきっぱりと否定し、「会社は株主のためにある」との意見に対して、人間のために、家族のためにあると反論する。

 経済合理性よりも人間の尊厳、命、精神構造が大切だと。

 まったく、そのとおりだと思う。

 債権者には「借金を返せ」という権利が当然ある。

 だが、その人や家族の命までをも奪う権利はない。