注目される中国共産党大会についての情報をいくつか。

 環境への配慮、農村対策、貧富の格差、社会保障など、調和社会への努力が語られ、また輸出依存度を引き下げ、国内の消費を高めるとの方向も語られている。

 国際関係については、平和外交の路線が語られているが、国防費急増の理由については十分な説明がてかったようす。

 党内民主主義の問題とともに、「人民が主人公」の路線を複数政党制の方向に結実させる努力も必要ではないか。

 いずれにせよ詳細はこれからか。

 成長一辺倒の脱却明言 胡総書記政治報告 中国共産党大会開幕(東京新聞、10月16日)

 【北京=新貝憲弘】十五日開幕した第十七回中国共産党大会で、胡錦濤総書記が行った政治報告では、成長一辺倒から、農村や資源、環境とのバランスに配慮した経済発展を目指す「又好又快(立派で急速な)発展」を明確に示した。格差拡大や環境問題など改革開放の“副作用”解決に向け、胡政権が重視する「和諧(調和)」を経済政策でも取り入れた形だ。

 「又好又快」は昨年末からみられる表現で、従来の「又快又好」の語順を入れ替えただけだが、意味は深い。改革開放路線は、都市・沿海部をけん引役に経済成長率の年平均10%以上を実現させたが、農村・内陸部との格差は拡大。資源・エネルギー不足や環境破壊も深刻化し、成長の足かせとなる恐れも出てきた。

 中国共産党は二〇二〇年までに「小康(生活に困らない)社会」を目指している。報告では、国内総生産(GDP)を二〇年までに二〇〇〇年の四倍とする目標を、GDPの「総額」から「一人当たり平均」へと表現を変え、低所得者の底上げをすることで〓小平氏が示した「共同富裕」の実現を図る。

 特に都市と農村をはじめとする格差是正が急務となる中、農業の「適度な大規模化経営」を条件付きで容認。積極的な技術導入で農業の企業化を進め、農業振興を図る方針を示した。また農民の増収策として、農村部企業(郷鎮企業)を発展させて就業させる兼業化も対策として盛り込んだ。

 地域格差では、西部地区(チベット自治区や四川省など)や東北部に加えて中部地区(安徽省や河南省など)の振興にも力を入れる。沿海部と内陸部が「連携を密にした経済圏・経済ベルト」づくりで均衡的な発展を目指す。

 このほか、工業偏重の経済構造を調整、自主開発能力や省エネ・環境レベルの向上で国際競争力を高めるとしている。

国防問題 軍のハイテク化示す

 【北京=平岩勇司】国防問題で胡錦濤総書記は「党の絶対的な指導という根本的原則と、人民の軍隊という基本的な趣旨を終始堅持する」と述べ、人民解放軍が党の指揮下にあることをあらためて強調。「情報化の軍隊をつくり上げ、情報化の戦争で勝利を勝ち取る」とハイテク化による軍の強化を訴え、軍と民間が結合して武器装備の開発・製造能力を高める方針を示した。

 今年の国防費は前年当初予算比で23・6%増と膨張しているが、「中国は防御的な国防政策を実行しており、軍備競争には加わらず、いかなる国にとっても軍事脅威にならない」と話すにとどまり、海外諸国の「中国脅威論」に対する説得力はなかった。

 外交面では対日関係を含め「隣国を仲間とみなす善隣外交」を継続し、改善が進む日中関係を促進する認識を示した。

 一方で、「他国の内部問題に干渉せず、自らの意思を他の者に押しつけることはない」と強調した。民衆を弾圧するミャンマー軍事政権への制裁に中国が消極的なことに対しては、西側諸国から批判がある中、内政不干渉の原則を繰り返した。

※〓は、登へんに、右にこざと

 中国、輸出依存型経済からの脱却目指す=胡錦濤・中国共産党総書記(ロイター、10月15日)

 [北京 15日 ロイター] 胡錦濤・中国共産党総書記(国家主席)は15日開幕した第17回党大会で、中国は輸出主導型の経済成長モデルから脱却し、拡大する国際収支の黒字を縮小するために個人消費を一段と促進するとの方針を示した

 総書記は、人民元相場のより自由な変動を容認し、資本規制を徐々に解除していく方針をあらためて表明した。

 また、拡大する原材料の消費に依存する代わりに、テクノロジーの発達を促進することが、中国の経済成長のバランスを改善するための重要な要素となる、との認識を示し、「これは、中国経済全体にとって極めて重要な、危急の戦略的課題だ」と指摘した。

 19日にワシントンで開催される7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、中国の輸出主導型の経済成長モデルが、協議すべき問題として取り上げられる可能性が高い。

 急成長の矛盾に対応 中国共産党大会が開幕 「環境」「格差」改革訴え 胡総書記報告(しんぶん赤旗、10月16日)

 【北京=山田俊英】五年ごとに開かれる中国共産党第十七回大会が十五日、北京の人民大会堂で開幕しました。二千二百人の代議員を前に胡錦濤総書記が中央委員会報告を行い、国民の生活向上に向けて経済や社会の「科学的発展」を強調しました。国際・外交分野では「平和発展の道」を強調し、中国が軍事的脅威にならないと主張しました。

 胡総書記は、前大会以来の五年間、国内総生産(GDP)の年平均伸び率が10%以上になり、国民の収入も増えて、目標である「小康社会」(生活にややゆとりのある経済水準)の全面建設に向けて前進したと評価しました。

 その一方、「われわれの活動はまだ人民の期待にかなうものになっていない」と困難や問題点にも言及しました。資源の浪費や環境汚染、格差拡大とともに、雇用、社会保障、教育、医療、住宅など「大衆の切実な利益にかかわる問題がかなり多い」と指摘。「党の執政能力は新しい情勢の新任務に適応していない」と述べつつ、これらの問題を重視し、解決をはかるよう求めました。

 胡総書記は、科学的発展観は「新たな発展の要請にこたえて提起されたもの」だと指摘し、主要な内容として、人間本位、均衡のとれた持続可能な発展、農村や環境への配慮をあげました。「社会主義の調和社会の構築は、中国の特色ある社会主義事業の全分野での長期の歴史的任務である」と位置付けました。

 経済政策では、「創造革新型国家」の構築、農村の繁栄、省エネなどを優先課題にあげました。

 また、「人民が主人公となることは社会主義の民主政治の本質だ」として、議会にあたる人民代表大会制度の改善を呼びかけ、人口に比例した代表の選出や常務委員会制度の充実を提案しました。

 報告では「民生の改善」に一つの章を割き、教育に対する財政支出の拡大、雇用の創出、低所得者への支援、最低賃金の引き上げを求めました。全国どこでも保障を受けられる統一した社会保障制度も整備することにしました。

 大会の会期は二十一日まで。議題は中央委員会報告のほか、規約改正、中央規律検査委員会報告の審議、決定と新しい中央委員会の選出です。大会閉幕の翌二十二日に開かれる第一回中央委員会総会で政治局など指導部人事が決定されます。

「平和発展」の外交強調

 【北京=山田俊英】中国共産党の胡錦濤総書記は十五日の中央委員会報告で、これまでの「平和発展の外交路線」を確認し、先進国との戦略対話や各国の政党との交流を進めると表明しました。

 国際情勢については「平和を求め、発展を目指し、協力を促進する願いはすでに阻むことのできない時代の流れとなっている」との認識を示しました。その一方、「覇権主義と強権政治は依然として存在している」として、米国の一国覇権主義を暗に批判しました。

 中国外交の基本的立場として、国連憲章と国際法の順守や経済面での相互補完、文化の多様性の尊重を主張しました。「いかなるときでも平和的方式で国際紛争を解決する」ことを強調しました

 台湾問題では、「一つの中国」原則を前提として「台湾を中国から切り離すことは絶対許されない」と強調。同時に「敵対状態の正式終結について話し合い、平和の合意を達成し、両岸関係の平和的発展の枠組みを構築したい」と述べ、台湾側に対話を呼びかけました。

党内民主主義と理論研究を提起

 【北京=山田俊英】中国共産党の胡錦濤総書記は十五日、改革開放によって党が執政能力の向上を迫られているとして、思想建設、高い資質の党員・幹部の育成、民主集中制の健全化、汚職の根絶が急務になっていると述べました。

 理論分野では、「現代中国のマルクス主義の大衆化を促す」ことや理論研究プロジェクトの推進、若手理論家の育成をあげました

 「党内民主の建設」では、「党の代表大会制度の充実」を提起しました。いくつかの県で、大会代議員が大会閉会中も活動する「党代表大会常任制」を試行することを明らかにしました。中央政治局が中央委員会総会に定期的に活動を報告するなど、監督を受ける制度を確立することも表明しました。

 汚職根絶は「党が終始取り組まなければならない重要な政治任務」であり、「長期性、複雑性、困難さ」を認識するよう訴えました。