朱建栄編『「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか』(角川学芸出版、2007年)を読み終える。

 副題は「奥田碩のトヨタイズム」であり、奥田氏との対談がメインの本である。

 全体としては、トヨタのPR本といっていい。

 奥田氏は小泉「構造改革」を褒めたたえ、日本再生を語る中でも、国民の生活をいっさい問題にしようとしない。

 「ワーキングプア」など、どこにも見えてはいないのだろう。

 それにしても、次の言葉は、よくも堂々と言えたもの。

 「トヨタの場合、何がいいのかというと、

 社員一人ひとりに対する訓練が行き届いているということでしょう。

 精神的な面で、仕事を愛する形に誘導していくところがあります。

 それと会社に対するロイヤリティ、忠実さがある。

 そういうものを作っていく土壌が会社の中にあるということです。

 社員一人ひとりが、それに染まっていくのです。

 よく、それをトヨタのDNAと言っています。」

 もちろん人を部品のように扱う、トヨタ流労働工学の実態については一言もない。