文書は、兵庫県産業労働部産業政策局産業政策課が出した「兵庫県の経済・雇用状況」の「5・トピックス(本県の経済立地効果について)」であるらしい。

 「本県の企業立地は、件数だけでなく、雇用予定従業者数や設備投資総額といった立地効果においても全国1位となっている。」

 「また、本県の1件あたりの立地面積は全国平均をやや下回るが、雇用予定従業者数や設備投資総額は1件あたりにしても上位にある。」

 となっているが、「雇用予定従業者」のほとんどが非正規雇用であり、しかも企業側が直接の雇用責任を放棄する形態の雇用であることについては、一言もふれていない。

 だいたい、兵庫県は震災前から一貫して、有効求人倍率が低い。

 ・2005年完全失業率
   (『データでみる県勢2007年版』(矢野恒太郎記念会)196ページ)
                    全国平均   兵庫県
        国政調査         6.0%      6.7%
        就業構造基本調査  5.4%      7.4%
        労働力調査       4.4%      4.8%
 ・有効求人倍率(172ページ)
                  90   95   00  05年
          全国    1.40    0.63    0.59    0.95
          兵庫県   1.09    0.48    0.44    0.83

 そのうえ、県が175億円ともいわれる補助金を出す尼崎の松下プラズマ工場は、新規採用のうち正規雇用はわずかに6人、非正規雇用は236人である。

 これでは、大企業による兵庫県民安づかい政策へのご奉仕以外の何ものでもないではないか。

 ええ加減にせえよ。

 とはいえ、こういうむなしいいい訳をせねばならないところへ、追い込んできた世論の強まりはまちがいない。

 これを、さらに大きく育てていくことが課題である。

 日銀に兵庫県が反論 「企業立地の波及効果は大」(神戸新聞、1月26日)

 全国ナンバーワンの企業立地件数は「実」も伴っている-。兵庫県は二十五日までに、こんな内容のレポート「本県の企業立地効果について」をまとめた。二〇〇六年の県内への企業立地は百十五件と二十一年ぶりに都道府県で一位となったが、日本銀行神戸支店が「雇用面など地元波及は限定的」と報告するなど効果に疑問を呈する分析もあることから、反論を試みたという。(小林由佳)

 レポートによると、〇六年の県内企業立地は、件数だけでなく、雇用予定者数(四千六百五十一人)と設備投資総額(約二千七百四十億円)も全国一位。一件当たりで計算しても、どちらも上位十位に入り、「効果もトップクラス」と胸を張る。

 県の担当者は「地元への波及効果を疑問視する世間の声に反論したかった」としているが、念頭にあるのは、昨年十一月に日銀神戸支店が発表したレポートのようだ。

 同支店は「兵庫県に進出した企業の大半は近隣からの中堅・中小で、雇用への波及は限定的」と指摘。さらに「大手メーカーが進出しても、地域外企業との取引が多く、地元への直接的な恩恵は必ずしも大きくない」とした。

 確かに、進出企業の約90%が近隣府県からの中堅・中小だが、「雇用と設備投資額を見る限り、効果が大きいのは明らか。近隣府県からの転入が多いかはそれほど関係ない」と県。むしろ、一件当たりの企業立地面積が全国平均より小さいことを挙げて、「平均規模が小さくても効率的な企業立地が展開されている」と強調している。