不破哲三『小林多喜二 時代への挑戦』(新日本出版社、2008年)を読み終える。

 最近の2冊のマンガを除けば、長く多喜二にはふれていない。

 おそらく学生時代が最後である。

 作品やその相互関係の分析には、ほう、そうかと思うしかない。

 とはいえ、「歴史の中で読む」という方法は、ここにも威力を発揮している。

 多喜二が抱いた「長編」への構想、

 そして、いわゆる「ハウスキーパー」問題にも。

 25才で『1928年3月15日』を書き、29才で虐殺される。

 実に、短命な作家である。

 そして、実に、濃密に生きた人間である。

 著者は多喜二の自己発展力に注目するが、

 その一因は、自己総括の潔さにあるかもしれない。

 労働者内部の階層秩序と階級的連帯、

 「現実の観念的省略」の克服と、

 社会科学が正面から受け止めるべき論点も見える。