エ・ヤ・ドラブキナ『冬の峠』(新日本新書、1970年)を読み終える。

 副題は「1920-22年のレーニン」。

 松竹さんのブログで初めて知り、さっそく古本屋で手にいれたもの。

 著者はこの本を、最後の3年間の「レーニンについての談話、かれについての深い思考」と特徴づける。

 死にいたる最後の3年、レーニンはそれをおそらく予感しながら、海外からの軍事介入、内乱の危機、天候不順による飢饉や飢餓と闘い、さらに戦時共産主義から新経済政策への社会建設の大きな路線転換をはたしていく。

 印象的なのは、その転換にあたり、農村で活動する共産党員の声を注意深く検討していくだけでなく、たくさんの「無党派」「非党員」農民の声を聞き、その話し合いに自ら加わるレーニンの姿。

 政治の主人公は、国民であり、既存の理論や政党ではない。

 自身の問題理解を意識的に批判の俎上にのせ、官僚主義・命令主義の傾向を廃し、国民の声に学ぶ意欲と能力をもった党をつくろうとするレーニンの行動は切実である。

 なるほど、レーニンが労働組合を共産主義の学校だと語ったのは、このような路線転換の中でのことであったか。

 それにしても、毎年おおよそ全集2冊分の著述を残しつづけた約30年の理論的生涯はすさまじい。

 新経済政策の形成過程やその内容、戦時共産主義の問題点に対する認識の深まりなど、この時期のレーニンの理論的前進については、別に追加的に学ぶ必要があるところ。