川勝平太『経済史入門』(日本経済新聞出版社、2003年)を読み終える。

 新書サイズの本にもかかわらず、「日経文庫」を名乗るシリーズの1冊である。

 近年のインドの経済成長を、歴史の大局にどう位置づけるかにかかわる学習。

 「グローバル経済史と近代日本文明」の章に、問題意識の骨格がある。

 インド・中国などアジア交易圏との交流が、東西両端に位置するヨーロッパ(とりわけイギリス)と日本の経済文化を成長させた。

 当時のアジア経済の優位は明らかで、いわゆる停滞論は事実と異なる。

 アジアから入手したそれぞれの物品を自給することができるようになったところに、両国のその後の経済成長の基礎がある。

 こうした理解は、両国経済史を一国史的にのみとらえる視角からは出てこない。

 成長した両国等がアジアに対して経済的優位となるのは、近代に入っての短い期間のことだけである。

 今日のインド・中国の台頭は、再びそれを逆転させんとするものととらえられる。

 関心をひかれたのは、大雑把にまとめると、以上のような問題の立て方となる。

 史実の裏付けについては、もう少し大きな本を読む必要があり、他方で、これらへの批判的検討の成果にも学ぶ必要があるのだろう。

 とりあえずは、資本主義に先立つ時期の世界構造に関する学びの入口に立ったということである。

 繰り返しマルクスの経済学や社会理論に対する批判が登場するが、そもそものマルクス理解に不十分さが見られるものが多く、その点は大変に残念である。